Icom ID-1 Report

アイコム デジタルトランシーバ ID−1使用レポート

第8回:移動運用をしてみよう


1200MHz帯は飛ばないと思っている方が多いかと思いますが,実はそ んなことはないんです.
障害物がなければ,他のUHF帯と同じくらい,いゃ,それ以上遠くま で届きます.
ということは,いかに障害物がない環境を作るかということで,遠 くまで電波を飛ばすことができるわけです.

ここでは,これまで1200MHz帯を運用してきた経験から感じているこ とをいくつか書いてみます.

1200MHz帯の電波伝搬

一般に1200MHz帯では異常伝搬はまれです.時々ラジオダクトにより 遠くと交信できることもありますが,滅多に現われません(筆者は 2エリアから6エリアへのダクトと思われる遠距離交信の経験があり ますが,過去に1回限りです).
全くないとは言えませんが,それに期待するのは途方もないくらい 待ち続けなければならないでしょう.

てっとり早く遠くに電波を飛ばすには

地球は丸いのです.やはり高さを上げることで見通し距離を稼ぐこ とができます.1200MHz帯となれば波長は23cmですから,まわりの建 物から少し離れていれば十分です. できるだけ高い位置にアンテナを設置することです.
見えないところにはいくらパワーを入れても届きません.

太い同軸ケーブルが必要?

確かに高い周波数は同軸ケーブルでのロスが気になるものです. 無線機から10Wの出力だけれどもアンテナ直下では5Wもなかっ たと言うことは良くある話です.でも,その主な原因は同軸ケーブ ルの長さや太さも一因ですが,コネクタのハンダ付け不良等による コネクタの変換ロス,同軸ケーブル踏みつけ等による不均質さがSWR 悪化の原因になることがあります.
全く関係ないとは言いませんが,もともと遠くまで届くバンドなの で,送信出力はあまり気になりません.

八木アンテナ,それとおmコリニアアンテナ?

アンテナも遠くまで電波を飛ばすために効果があります. 特に波長が短い1200MHz帯では多素子の八木アンテナを簡単に作るこ とができます.しかし,ゲインを追求したアンテナほど指向性が強 いものです.ほんの数°ずれただけで相手局が聞こえなくなってし まうことも良くあります.風が吹いてアンテナが揺れても同じです.
このように確かに遠くのいつも同じ場所にいる1局と交信したり, 混信やノイズ源を避けるには多素子の八木アンテナや大口径のパラ ボラアンテナは良いかも知れませんが,できるだけたくさんの局と 交信しようと思った時は使いにくいものになります.
そこで,最適なアンテナはコリニアアンテナです.GPアンテナに 似ていますが,構造が違います.半波長の同軸管または同軸ケーブ ルを芯線と外皮を互い違いに数10段接続したものです. 波長が短いので,段数も多くでき,ゲインもそこそこあります. コリニアアンテナは,水平面方向には無指向性アンテナですので, アンテナの方向を気にせず多くの局と交信することができます.
もちろん,多段のGPアンテナも有効です.

やっぱり高い場所からの運用は最高!

前置きがずいぶんと長くなりましたが,結局のところ,高い場所か ら運用するのが一番です.高い山の上へ移動して運用すれば,数1 00km離れた局とも楽々交信することができます.山の上から運 用すると,「散歩中ハンディ機で交信している」,「部屋の中で交 信している」といったことを良く聞きます.自分が山の上に行かな くても,相手が山の上にいれば少ない出力,小さなアンテナでも十 分交信できるのです.

デジタルモードで注意すること

車で移動しながらID-1を使ってみましたが,予想通りアナログモー ドと違ってノイズに弱いことがわかります. アナログFMだと,多少ノイズが入っても人間がカバーして何とか 内容を理解しますが,例えばDVモードだと,電波の強弱でデータ が紛失し声が宇宙人の声のようにひっくり返ってしまいます.なん とか交信できるものの,声の高さの違いは意外と人間がカバーでき ないもののようです.

それから,デジタル通信には電力を使います.もちろん,それはデ ジタルビットを1つでもこぼしたくないからです.パケット通信で もありましたが,ある程度信号強度が強くないと全く通信ができま せん.特にDDモードは帯域が広くパワーが分散しているのでそん なに出力があるようには思えませんが,意外と多くの電力(常置場 所で10Wが上限ですが)を使っていることがわかります.

プリアンプを利用する上での注意

特にDDモードでの運用に注意してください.基本的にDDモード はシンプレックス通信です.送受を高速に切替えて動作しています.
1200MHz帯になると,受信感度を補うためにプリアンプを入れること も多いですが,プリアンプの送受の切替えはDDモードの送受の速 さには追い付きません.DDモードの使用を考えるなら,プリアン プを入れてはいけません.ただでさえプリアンプの接続のためにケー ブルとコネクタが増え,ロスが増える可能性があります.
プリアンプは他のモード(通常のアナログモードやDVモード)で, プリアンプを含めた受信系が完全調整されて初めて使えるものと思っ た方が良いでしょう.

移動運用しよう

話がずいぶんとそれましたが, 1200MHz帯の醍醐味を味わうためにぜひ移動運用しましょう. デジタルモードでの一斉移動ができたら面白いかも知れませんね.
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2004.03.23.(初版作成)
2004.05.02.(最終更新)
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